お知らせ
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作成日:2025/11/01
労使見解 人を活かす経営を実践しよう。



労使見解の背景と現代的意義

「労使見解」は、1975年に中小企業家同友会全国協議会によって発表されました。この文書は、労使関係の基本的な考え方を示し、企業の発展における労使の信頼関係の重要性を強調しています。労使関係とは、労働者が労働力を提供し、使用者がその対価として賃金を支払うという雇用関係に基づくものです。

しかし、労使見解が打ち出した理念は、単なる契約関係を超えたものでした。そこには「人間尊重経営」という思想が流れています。すなわち、労働者を単なる労働力としてではなく、一人の人間として尊重し、経営者と労働者が共に学び、共に成長していく関係を築くこと。それこそが、企業の持続的な発展を支える基盤であると説かれています。

この理念は、約50年を経た今でも変わらぬ価値を持っています。むしろ人口減少やデジタル化、働き方の多様化といった現代社会の変化を踏まえると、当時の「労使見解」に込められたメッセージは、より深い意味を持つようになっています。

経営課題を共有する“協働の時代”へ

これまでの労使関係は、しばしば「経営者対労働者」という対立の構図で語られてきました。しかし、社会環境が大きく変化する今、労使がそれぞれの立場から同じ課題に向き合い、共に解決していく「協働型労使関係」が求められています。

人手不足、賃上げと物価高の両立、長時間労働の是正、DXへの対応など、経営者一人では抱えきれない経営課題が山積しています。こうした中で、労働組合や従業員代表の意見は、企業にとって貴重な現場の知恵です。経営者がその声に耳を傾けることで、現実に即した経営判断が可能となり、組織全体の生産性や士気を高めることにもつながります。

一方で、組合側も時代の流れとともに労使関係を見直し、経営課題に積極的にかかわり、解決していく姿勢が必要です。
従来の「要求型」から「提案型」へ。賃金や労働条件の改善だけでなく、企業の存続や発展を見据えた協議が求められています。経営情報の共有を通じて、会社の現状やリスクを正しく理解し、従業員の立場から建設的な提案を行うことが、真のパートナーシップにつながるのです。

信頼は“理解”と“対話”から生まれる

信頼関係の第一歩は、「相手を理解しようとする姿勢」です。経営者は、組合や従業員の声を単なる要求ではなく「現場からの提案」として受け止めること。一方で組合は、経営者の苦悩や責任の重さを理解し、協働の視点で意見を交わすことが大切です。

労使協議会や職場懇談会などの場を活かし、課題を共有する文化を根づかせましょう。特に、単なる情報共有で終わらせず、「どうすれば職場が良くなるか」「人をどう活かすか」といったテーマに踏み込んだ議論を重ねることが、労使双方の信頼を深める鍵となります。

労使が共に描く“持続可能な経営”

これからの時代における労使関係は、単なる「労働条件交渉」から「持続可能な経営づくり」へと進化すべき段階に来ています。
企業の健康経営や人的資本経営の推進には、社員一人ひとりの意見と、現場の実感が欠かせません。組合が現場の声を集約し、経営者に建設的な提案を行うことは、まさに企業の競争力を高める行動そのものです。

例えば、メンタルヘルス対策やワークライフバランスの改善は、組合の提案から実現した企業も多くあります。また、DX化による業務改善やスキルアップ支援のように、組合が積極的に経営課題の解決に関わる事例も増えています。こうした実践こそが、“対立”ではなく“協働”の時代を象徴しています。

まとめ:労使は“未来を共に創るパートナー”

1975年の「労使見解」は、当時としては先進的なメッセージを含んでいましたが、今こそその精神を再確認すべき時期に来ています。
経営者は、組合を「経営のパートナー」として捉え、信頼と協働の関係を築く努力を。組合は、「会社をよくする主体」として、現場の声を届け、課題解決に積極的に参加すること。

社会保険労務士として感じるのは、法令順守や制度整備だけでは、健全な労使関係は生まれないということです。そこに必要なのは、「人を活かす経営」です。

労使見解の精神に立ち返り、共に考え、共に行動し、共に未来を創る。
その姿勢こそが、時代にマッチした新しい労使関係のあり方ではないでしょうか。


https://note.com/srterrace/n/n8806eec6fadc?from=notice