令和7年10月1日付で厚生労働省より発出された重要な通知、「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」を恒久化する取扱いについて、わかりやすくお伝えします。
これはいわゆる「年収の壁」問題に大きく関わるテーマであり、経営者・総務担当者・働く方すべてに影響する制度改正です。
1. 年収の壁対策がついに恒久化
これまで「年収の壁・支援強化パッケージ」に基づき、時限措置として行われていた「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」
具体的には、パート・アルバイトの方が繁忙期などで一時的に収入が増え「年収130万円を超えた」としても、「これは一時的な収入増です」と事業主が証明すれば、被扶養者資格を維持しやすいという仕組みです。この取り扱いが今回、期限なしの恒久措置となりました。
2. なぜ企業の実務が変わるのか
これまでは時限措置のため、不明瞭さが残っていた部分もありました。しかし恒久化されることで、
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証明の基準
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社内での運用ルール
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従業員への周知方法
これらを企業がしっかり整備する必要があります。
実務面で重要なのは、「なぜ一時的な収入増と言えるのか」その根拠を明確にしておくことです。
たとえば、
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繁忙期によるシフト増
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一時的な業務命令
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売上変動によるスポット対応
といった“客観的な理由”を示す資料を社内で保管しておくことが求められます。
3. 従業員にとっての安心と働きやすさ
これまで多くの方が、「扶養から外れるのは不安だから…」と労働時間を調整して働いていました。
今回の恒久化により、
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扶養を外れる不安が減る
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収入を増やしやすくなる
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職場の人手不足対策にもプラス
こういったメリットが生まれます。
特にパート・アルバイトの方にとっては、これまで“壁”とされてきた130万円ラインの心理的負担が軽くなり、前向きに働ける環境が整うと言えるでしょう。
4. 事業主証明の“適正運用”が企業のリスクを守る
一方で、事業主が証明するという行為には、企業としての責任が伴います。
不適切な証明をすると、後々の調査で
「これは一時的ではない」
「実態と異なる証明を出している」
と判断され、不正な認定として問題になる可能性があります。
そのため企業は、
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証明の根拠となる記録(シフト表・業務命令・売上資料等)を保管
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判断基準を社内で統一
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申請書・証明書の記載内容を慎重に確認
こうした“リスク管理”が不可欠です。
適正な運用は、企業を守りながら従業員の生活を支えるための重要な視点となります。
5. ルール整備でトラブルを未然に防ぐ
扶養認定は従業員の生活に直結するため、企業の対応次第でトラブルに発展することがあります。
例えば、
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「他の人と扱いが違う」
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「なぜ自分の証明は出してもらえないのか」
といった誤解が起きる可能性があります。
そのため企業は、
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どのケースで証明書を発行するのか
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どこまでを“一時的な収入増”と判断するのか
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その基準をどう従業員へ伝えるのか
これらを明文化し、従業員に周知することが大切です。
明確なルールは、公平性を保つだけでなく、労使双方の安心につながります。
■まとめ
今回の恒久化は、単なる制度変更ではありません。
働く人が安心して収入を増やせる環境をつくると同時に、企業が適正な運用を求められる重要な転換点です。
企業にとっては、
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社内ルールの整備
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証明の根拠資料の保管
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従業員への丁寧な説明
これらが、今後のリスク管理や信頼関係づくりに欠かせない要素となります。
“年収の壁”に縛られない働き方を実現するためにも、制度のポイントを正しく理解し、実務に落とし込んでいきましょう。
労使はともに大切なパートナーです、お互いに協力して事業を繁栄していきましょう。































